鈍色望遠鏡

文芸サークル「鈍色望遠鏡」のブログです。ただいま改装中。

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戦乱の世界

ヴィンランド・サガ 7 (7) (アフタヌーンKC)ヴィンランド・サガ 7 (7) (アフタヌーンKC)
(2009/02/23)
幸村 誠

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ヒストリエ vol.5 (5) (アフタヌーンKC)ヒストリエ vol.5 (5) (アフタヌーンKC)
(2009/02/23)
岩明 均

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今日発売の『ヴィンランド・サガ』の七巻と『ヒストリエ』の五巻を読みました。

いやあ、この二冊が今日発売だって言うことに、ネットサーフィン中にたまたま気付いて慌てて買いに行ったんですよね。
普段、本を買うときは街に行く用事があるときまで我慢して、ポイントの付くお店で購入するようにしているのですが、今回はいてもたってもいられずに、近所の本屋さんですぐさま買ってきました。

どちらもすごく面白かったです。

『ヴィンランド・サガ』を描いているのは『プラネテス』で有名な幸村 誠氏。
『ヒストリエ』を描いているのは『寄生獣』で有名な岩明 均氏。
『ヴィンランド・サガ』も『ヒストリエ』も、共に近代兵器登場前の戦争を扱った物語なのですが、アプローチの方法が両者で全然違うところがそれぞれ良いです。

『ヴィンランド・サガ』は、11世紀北欧のヴァイキングたちの戦いを、少年剣士「トルフィン」(とその主人であり仇である「アシュラッド」)の活躍を軸に描くもの。
『ヒストリエ』は、紀元前のギリシャ人たちの戦いを、将来大国の書記官となる「エウメネス」の若かりし頃の活躍を軸に描くもの。

ただ、この二つの物語、扱う時代や場所・人物などは違いますが、それぞれの物語の主人公が自らが戦火に身を置くものでありながらも、どちらも「戦いを好む人々」を嫌悪しているところなんかは興味深いと思いました。
これは、「戦争(自分)の正しさ」を妄信する人物よりも、穿った見方をする人物を主人公にした方が、戦争を多角的に捉えられるという事情からかな、と思いました。

これらの物語を読んでいると、昔の人々と今の人々との価値観の違いを思い知らされます。
特に、人の命の扱いの軽さには驚きを感じます。
まあ、奴隷制度なんてものも最近まで残ってましたしね……(ある意味では今も残っているし)
いろいろと考えさせられる部分も多い漫画たちです。

『ヴィンランド・サガ』も『ヒストリエ』も、どちらもこれらの巻でやっと「主人公が成り上がるための道程」が見えてきたような感じですので、今後の展開がますます楽しみです。

あー、最近の読書傾向を分析して気付いたのですが、私はなんか、「ちっぽけな力しか持たない主人公が努力や知略によって自らを成長させて、成り上がっていく話」っていうのが好物みたいです。
特に、敵が強大であればあるほど燃えますね。
そんな物語を扱った本を知っている方がいたら、教えて頂けると嬉しいです。

漫画でも小説でもノンフィクションでも、割となんでもいけますから。

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真の『怪物』は誰か?

シフト〈1〉世界はクリアを待っている (電撃文庫)シフト〈1〉世界はクリアを待っている (電撃文庫)
(2008/06/10)
うえお 久光

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小説:うえお久光『シフト―世界はクリアを待っている―』の1?3巻を読みました。

この小説の1・2巻はもともとハードカバーの単行本として出版された作品だったものが文庫になったもので、3巻は文庫での書き下ろしです。
ハードカバーから文庫になったのは、いまいち売上が振るわなかったからなのかな?と邪推してしまいます。

ともあれ、この小説、個人的にはものすごく好きです。
文庫の折り返しには、
『一部の若者たちの間で起こった不思議な現象――眠るとロールプレイングゲームにも似たファンタジー世界へ《シフト》し、そこで、もう一つの生活を送る』
話だと書いてあります。
ぶっちゃけて、もっと単純に言ってしまうと、
「一部の中高生たちが、夢の中で大規模オンラインRPGゲームをプレイする話」
です。
ただし、一度《シフト》した世界の中で死んだら、《シフト》に関する記憶はなくなり、二度とアクセスできなる、とかいろいろな制約があります。
《シフト》してきた人間には自動的に職業(能力)が割り振られ、『戦士』、『魔法使い』、『ハウスオーナー』、『クリエイター』、『怪物系』等に分類されます。
……という感じで語っていくとものすごく長くなるんですが、とにかくまあ、世界設定が良くできていて面白いんですよ。

そして個人的にこの小説をすごく気に入った理由として外せないのが、怪物系っていうものの存在です。

そう、それでこの小説の主人公、怪物なんですよ!
人間に忌み嫌われて、意味もなく殺害の対象になる『怪物』。
この主人公は「トカゲ人間」なわけですが、そんな怪物として《シフト》してきた主人公が、差別されたり、葛藤したり、人助けをしたりするところが良いです。
『夢の中の世界だから』と言い訳して、次々に人を殺したり奴隷にしたり強姦したりする『人間』がいる中で、『怪物』のはずの主人公が秩序や仲間を守ろうと行動する様を見ていると、『本当にバケモノなのは誰だよ』っていう気分になれます。

前に、この小説って『アクセル・ワールド』と同系統の小説っていうか、ゲームの『.hack』にちょっと似てるっていうか、まあとにかくそんな感じってことを書いたんですが、さらに言うと主人公が漫画『ドロヘドロ』のカイマンに似てるなあ、とか思います。

まあ、長々と書きましたが、一言でいえば人外萌えにあてられました。
トカゲ人間かっこいい!
スライム少女かわいい!
この二つのことに気づけただけでも、この作品を読んだ意義はありました。

なんかもう、世界観とキャラクターに引き込まれて一気に読んでしまったせいか、細かい矛盾とか文章の癖とか設定の甘さとかを多少感じたりしつつも、ほとんど気にならずに読めました。
3巻の主人公が人間キャラだったことはちょっと悲しかったですけど。

とにかくそんな感じで、個人的には先日紹介した『アクセル・ワールド』と同じくらいに、今後の展開が楽しみな一冊です。

なんていうか、いくら同系統の小説って言っても、プロットとか世界観とか文章とか視点選択とかの総合的な「小説としての完成度」で言ったら、『アクセル・ワールド』の方がかなり上だと思うんですけど、『シフト』には、何か不思議な魅力があるんですよね。

興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

ただ、一つ、作者のうえお久光氏の文章には、かなり癖があることは覚えておいて頂きたいです。
特に、三点リーダ(『…』のこと)を多用する作家さんなので、人によってはものすごく気になるんじゃないかと思います。
まあ、とりあえずそんな感じです。

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加速する世界

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)
(2009/02)
川原 礫

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小説:河原礫『アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還』を読みました。

この小説は今年度の『電撃小説大賞』の大賞(第一位)作品なわけですが、大賞の名に恥じない素晴らしい出来の作品でした。

ライトノベルを読んで、そこに描かれる世界にここまで心を魅かれたのは、数年前に『電撃小説大賞』の銀賞(第三位)を受賞した(そしてその後『このライトノベルがすごい!』で第一位を獲得し、アニメ化し、アニメの続編までもが作られている)『狼と香辛料』を読んだ時以来です。
たぶんこの作品も、落とし穴にはまりさえしなければ『電撃文庫』の看板を背負って立つ作品になり得ると思います。

いやあ、凄かったです。

この作品はジャンル分けをするとすれば、「近未来SFバトルもの」だと思うのですが、その近未来で実用化されている「ネットワークシステム」の設定の巧みさには驚きました。
なんというか、「世界観」と「物語」が「ネットワークシステム」の存在を介して、完璧に適合している感じがするんです。

読みながら、「ものすごく丁寧に練り上げられたプロットを元に書いたんだろうな」っていう印象を受けました。(もっとも、この印象は、『電撃小説大賞』の大賞受賞作には共通しているものなのですが、やはりその中でもこの作品のプロットの完成度はすごいと思います)

三人称単視点で主人公の心情を表現する「文体」と「物語」との相性も抜群で、特にバトルシーンでは、「ハルユキ」の緊張感がこちらにも伝わってくるような臨場感が味わえて、ワクワクしました。

「デブでいじめられっ子」が主人公なあたりで、読むことを躊躇してしまう人が多そうですが、いじめ描写は苦にならない程度のものだと思いますし、「マイナスな状態」から主人公が成長していく物語なので、主人公の情けなさはそんなには鼻につかないと思います。(多少はイライラしたけど)
あと、「01」と表記されているように、続きものなので完結はしていませんが、一巻の時点では「ハッピーエンド」と言えるであろう終わり方をしているので、読後感も悪くないと思います。

いろんな意味で、続編の発売が楽しみな一冊です。

……ていうかむしろ、この世界観でいろんな話を書いてみたい!
なんだこの面白さは!
いいなあ、こんな世界と物語を書ける人は!
『川上 稔』氏の解説に、『いろいろと読み手の想像力を刺激するツール的な魅力を持った小説だと思います』という文章があったのですが、もっともな意見だと思いました。
あー、こんなオンラインゲームがしてみたいです。

あと、この小説のおかげで、『川上 稔』氏の小説も読みたくなりました。
(前に読んだ『終わりのクロニクル』が、少しばかり苦手な文体で書かれていたので、私は川上氏の作品はほとんど読んだことがありません。有名な作家さんなのに)


……ただ、まあ、褒めてばかりというのもどうかと思うので、個人的に「悪い意味で気になったところ」や「今後の展開の落とし穴になりそうなところ」について、簡単な分析をしながら見ていきたいと思います。

というわけで、以下、ネタバレ注意です。


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覗いてはならない異界

魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)魍魎の匣―文庫版 (講談社文庫)
(1999/09)
京極 夏彦

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小説『魍魎の匣』を読みました。

ものっすごく面白かったです。

この作品は「京極堂シリーズ」って呼ばれるシリーズミステリの第二弾なのですが(第一弾は『姑獲鳥の夏』)、これは単体で読んでも面白い本だと思います。


小説ではありますが、「宗教の在り方」や「犯罪者の心性」等について、「京極堂の意見」としていろいろな考察が書かれているのも興味深いです。

あと、登場人物がみんな魅力的でした。
その中でも作家の「関口」が特に好きです。
鬱々としたところに共感を覚えます。

あと、タイトルにもなっている「匣」のイメージがすごく綺麗です。
私はたぶん、「匣」があったら中を覗いて帰ってこれなくなるタイプの人間だと思います。


あー、なんか他にもいろいろ書きたいことがあるんですけど、なんだかうまく考えがまとまりません。
体調不良のせいかな?

とにかく、この本は万人に読んでもらいたいと思うくらいの良い本だと私は感じました。
(ちなみにこの本は、「長門有希の100冊」にも選ばれていました)
アニメ化漫画化もしているようなので、近いうちにチェックしてみます。
あと、続編も必ず読みます。


そういえば昔、『魍魎の匣』のこともよく知らずに、「青年と匣との幸せな生活」について描いた二次創作漫画を読んだことがあったのを思い出しました。
どこのサイトで見たのかは覚えていないけど、「匣」がものすごく可愛かったことだけは覚えています。
ちょっと探してみているのですが、話題になった作品であるだけに情報が多すぎて見つかりません。
何かそれっぽいものを知っている人がいたら教えてほしいです。


追記
わーい、頑張って探し続けてたら二次創作漫画が見つかりました!
すたひろBOX
↑のサイトさんにありました。
思いっきり小説のネタバレが含まれているので、気をつけてください。
あー、この人、『おたくの娘さん』の作者さんかあ。
どうりで面白かったわけです。

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物語製作機

ストーリーメーカー 創作のための物語論(アスキー新書)
を読みました。

「物語は理論で作れる」という立場で書かれた本ですから、人によっては全く受け入れられない本だとは思いますが、個人的には楽しめました。

この本の著者である大塚英志氏は『キャラクターメーカー』というこの本の姉妹編や、『物語の体操』『キャラクター小説の作り方』等の物語理論を扱った本を書いている批評家兼漫画原作者さんです。
あ、現在は大学教授もやっているらしいです。

本の内容は、『物語の体操』と『キャラクター小説の作り方』の内容を取捨選択して再構成して、学問的に体系立てて整理した部分(第一部)と、読者が自分の作りたい物語の内容を明確化するために30個の質問に答えるワークブック的な部分(第二部)に分かれています。

第一部は理論として面白いですし、第二部は質問に答えていけば本当に何かしらの「物語」が作れそうです。
まあ、詳しいことはアマゾンのレビューにすごくわかりやすい説明があったのでそっちを見てください。(なげやり)

『物語の体操』に載っていた「カード式プロット作成法」も第二部の中で紹介されています。
質問に30個も答えるのには根気が要りますが、この「プロット作成法」は結構簡単に行えるので、物語の創作に興味のある人にはちょっと試してみてほしいです。

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老紳士のレストラン

リストランテ・パラディーゾ
オノ・ナツメ先生の漫画「リストランテ・パラディーゾ」を読みました。
この作品、アニメ化が決定しているらしいですね。

「Roman」の単行本を買うとき、本屋さんでレジの列に並んでいたら、
本の帯の「イタリア老眼鏡執事」っていう言葉が飛び込んできて、気がついたら手に取っていました。
執事が大好きなんです。
だから執事が欲しいんです。
ていうか、むしろ執事になりたいんです。

でも、よく見てみると、
老「紳士」でした
「執事」じゃなくて「紳士」でした。
……徹夜明けで目(むしろ頭)がおかしくなっていたかっ!

まあ、「イタリア」、「老」、「眼鏡」、「紳士」っていうのも、それぞれが一つでもあれば三年は楽しめるくらいに好きな要素なので、別にいいんです。
うん、結果オーライです。


内容は、ネタバレに気をつけながらさわりだけ言ってしまうと、
「とある目的を持って田舎からローマに出てきた女の子が、老紳士ばかりが従業員として働くレストランに行く」
ところから始まる話です。

話がすごく丁寧に作られている印象を受けました。
暖かい気持ちになれて、老眼鏡紳士も楽しめる、オススメの一冊です。
紳士が格好よかったです。
そして紳士が可愛いかったです。
ていうか、むしろ老眼鏡紳士になりたくなりました。

外伝として「GENTE?リストランテの人々?」という作品も出版されているようなので、そっちも今度読んでみます。

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そこに物語はありました

Roman2巻
昨日発売の「Roman」第二巻(最終巻)を読みました。

この「Roman」という漫画は、Sound Horizonの「Roman」というストーリーCDを「原曲」として、桂 遊生丸先生の手によりウルトラジャンプ誌上で不定期連載されていた作品です。
(表記が「原作」ではなく「原曲」なところがなんか好きです。)


……あんまりにも凄い作品を読むと、自分のちっぽけさを感じて悲しくなりますよね!
エネルギーをごっそり持っていかれました。

いやもうほんと、感動しすぎて逆に鬱になるくらいに良い作品でした。
動悸がおさまらない。


紫と青揃い踏み
二冊並ぶともっと凄いです。
これ、一巻が「紫」で二巻が「青」っていうのは、「死から生への再生」ってことなんだろうなあ。


この漫画は、毎回別の舞台、別の登場人物の「物語」を一話完結形式で見ていく、という構成になっているんですが、そのひとつひとつの物語が、「Sound Horizon」の原曲に綺麗に対応していたり、さらには別の物語とどこかで繋がっていたりして、とにかくもう凄かったです。
あと、絵が神です。

この本を読んだあとに原曲を聴き直して、「Roman」とは、
「音楽によって漫画が描かれ、その漫画が音楽をより物語性の高いものへと昇華している」
作品なのだと感じました。

人々を感動させる物語を書くことを目標としている者としては、身の引き締まる思いがしました。


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