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『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』分析

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)
(2008/08/10)
伏見 つかさ

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小説『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』を分析してみます。
分析についての説明はこちらです。
以下、ネタバレ注意。


概要
・主人公(?)の「高坂京介」が、妹の「高坂桐乃」に"人生相談"をされる話。

文章技巧
・一人称単視点。
・地の文は京介の「語り」として書かれている。
・突飛な比喩、読者の心を代弁するかのようなメタフィクション的なツッコミ、軽快な文体などが「語り」によって形成されている。
・まとめて言ってしまえば、「笑いどころがあってオタク受けする読みやすい文章」で書かれた小説であると言える。

登場人物
○高坂京介(視点キャラ、高校二年生、凡庸)
○高坂桐乃(京介の妹、中学生、才色兼備だがオタク趣味を持つ)
○田村麻奈実(京介の幼馴染、天然)
○沙織(桐乃の友人、カリスマ的資質を持つオタク少女)
○黒猫(桐乃の友人、中二病オタク少女)
○「父」(現職警官、メカ音痴、厳格)
○「母」(主婦)
●「妹キャラたち」(名は割愛、「メルル」含む、桐乃の所有するゲームのキャラ、厳密には「人物」ではない)
●その他(桐乃の同級生、オフ会の参加者、喫茶店のメイドなど、「個性」はほとんど与えられていない。
以上、7+2人が登場する。


登場人物の役割

・京介を主人公とした場合の登場人物の役割
1.『主人公』→高坂京介
2.『贈与者』→田村麻奈実、高坂桐乃
3.『境界守』→(妹キャラ)、(喫茶店のメイド)
4.『使者』→高坂桐乃
5.『変化するもの』→沙織、黒猫
6.『影』→高坂桐乃、父
7.『トリックスター』→母
α.『移行対象』→なし
β.『恋愛対象』→田村麻奈実
γ.『真の目的』→妹との和解

『主人公』としての京介は、「桐乃のために犠牲になる存在」。
『贈与者』としての麻奈実は、「京介にオフ会の情報を与える存在」。桐乃は、「京介にオタクグッズを与える存在」。
『境界守』としての(妹キャラ)と(喫茶店のメイド)は、「京介が見るオタクの世界の象徴」(沙織をここに含めることも可能)。
『使者』としての桐乃は、「京介に依頼を行う存在」。
『変化するもの』としての沙織は、「とらえどころのない人物」。黒猫は「理解できない人種」。
『影』としての桐乃は、「凡庸な兄に反発する完璧な妹」(京介の「影」というよりも「光」)(対比関係)。父は、「京介が認めた妹の趣味を完全否定する存在」(対立関係)。
『トリックスター』としての母は、「京介が気付けなかった桐乃の変化に気付く存在」
『移行対象』は、なし。無趣味無個性である程度成熟した精神を持った京介には必要ない(強いて言うなら桐乃を当てはめられるだろうか)。
『恋愛対象』としての麻奈実は、「京介の幼馴染」(気の知れた相手、安定した関係)。
そして『真の目的』を「妹との和解」とした理由には、他の人物が持つ役割のほとんどが桐乃に関係するものであること、桐乃が京介にとっての「家族」であり「影」であることなどがあげられる。(「家族」も「影」も、物語において「和解すべき対象」として描かれることが多い)(また、『目的』として「平穏な人生を取り戻すこと」があげられるだろうが、京介が自ら騒動に首を突っ込んでいることを考えると、「平穏な人生を取り戻すこと」は『仮の(もしくは表向きの)目的』と言えるだろう。

1?7において桐乃が3つも役割を担っている。桐乃の存在は重要。
『境界守』に当たる人物のキャラが弱い。これは京介が「境界を越える」ほどの冒険をしていないことの象徴でもある。
桐乃の重要性、『境界守』の弱さを考えると、むしろこの物語における本当の主人公は桐乃であると推測できる。

・桐乃を主人公とした場合の登場人物の役割
1.『主人公』→高坂桐乃
2.『贈与者』→高坂京介
3.『境界守』→沙織
4.『使者』→高坂京介
5.『変化するもの』→沙織
6.『影』→高坂京介、黒猫、父
7.『トリックスター』→沙織、黒猫
α.『移行対象』→高坂京介
β.『恋愛対象』→なし
γ.『真の目的』→自身の二面性をさらけだした上での家族との和解

『主人公』としての桐乃は、「京介の力を借りながら精神的に成長する存在」。
『贈与者』としての京介は、「桐乃に情報を与える存在」。
『境界守』としての沙織は、「オタクコミュニティの代表」。
『使者』としての京介は、「桐乃が精神的に成長するきっかけを与える存在」
『変化するもの』としての沙織は、「とらえどころのない人物」
『影』としての京介は、「オタクの妹と一般人の兄」(対比関係)。黒猫は、「桐乃と方向性の違うオタク」(対立関係)。父は、「桐乃の趣味を完全否定する存在」(相互排斥関係)。
『トリックスター』としての沙織と黒猫は、「桐乃が入ることのできなかったオタク的コミュニティの住人」
『移行対象』としての京介は、「桐乃の人生相談を聞く存在」、また、「桐乃を父の排斥から守る存在」。
『恋愛対象』は、なし。ただし、京介を擬似的な恋愛対象とみなすことはできる。
そして『真の目的』を「自身の二面性をさらけだした上での家族との和解 」とした理由には、「優秀な自分もオタクの自分も、両方とも自分」というような意味の科白を二度使っていること、京介および父が、桐乃にとっての「家族」であり「影」であることなどがあげられる。

こうして考えてみると、京介よりも桐乃の方が物語の中心に近いところに位置していることがわかる。
つまるところ、この小説は、「京介の視点」で描かれた「桐乃の成長の物語」であると言えるだろう。(ただし、京介自身も桐乃の物語に関わることで多少なりとも成長している。そう考えると、この小説は「京介の成長の物語」であるともいえる。桐乃の物語に関わることで京介の物語も生まれた。この小説は、いわば「入れ子構造」になっているのだ)

物語の構成
この小説を「三幕構成」として考えるならば、
・『セットアップ』は、「京介の拾ったアニメDVDが、桐乃の所有物であったと判明する」ところまで。
・『第一ターニングポイント』は、「桐乃が京介に人生相談をする」ところ。
・『第二ターニングポイント』は、「桐乃の趣味が父親にバレる」ところ。
・『クライマックス』は、「京介と父の論争に決着がつく」ところ。
・『レゾリューション』は、「京介と桐乃が会話する」ところ。
・『ミッドポイントシーン』は、「桐乃がオフ会に行くことを決意する」ところ。
・『サブプロット』は、「京介と麻奈実の日常」と「桐乃と沙織と黒猫の出会い」。
となる。
それぞれの「ポイント」の設置個所(ページ配分)が適切。三幕構成の原則に忠実。綺麗な構成になっている。

今後の展望
この小説の続編が書かれるとしたらおそらく、
・桐乃のオタクライフ
・京介の苦労
・桐乃と沙織と黒猫の友情
・京介と麻奈実の恋愛
を京介の視点を通して描いた話になるだろう。
また、新キャラが出るとしたらおそらく、
・京介の同級生(男)
・桐乃の同級生(一般人の女)
・桐乃の仕事仲間(雑誌モデル)
・沙織か黒猫か麻奈実の関係者
・オタク業界の有名人(声優さんとか)
になるだろう。(「桐乃の恋愛対象(男)」が現れる可能性も考えたが、兄である京介が「擬似的な恋愛対象」としての役割も担っていることを考えると、少なくともあと1?2巻の間は、そうした男が出てくることはないと考えてもいいだろう)
そして、この物語に終着点があるとすればおそらく、
・桐乃と父との本当の和解
になるだろう。

ここに書いたことは、一巻を分析したことで得られた情報を元に行ったただの憶測である。
この小説の続編が本当はどんな話なのかは、発売中の二巻を読んで確認して頂きたい。
ちなみに、私はこれを書いている時点では、まだ二巻のあらすじすら知らない。

感想
改めて妹が欲しくなりました。

この小説は、面白さ、読みやすさ、テーマ性を兼ね揃えた、わりと多くの人に勧めやすい小説だと思います。
メディアミックスの話が既にあるってことにも納得がいきます。
私には妹がいませんし、両親はオタク趣味に寛大な人ですから、いまいち主人公の感性がつかめませんでしたが、それでも主人公の思考や行動にはリアリティが感じられました。
実力のある作家さんなのでしょう。
今度、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の続刊や『十三番目のアリス』シリーズも読んでみたいと思います。




やっと書き終わりました!
「分析」なんて初めて書いたので、だいぶ手間取りました。
かけた時間も書いた文章量も、学校に提出したレポート類をはるかに超えています。
まあ、書くのは楽しいですけど。
次回はもうちょっと早く(&内容を短く)書きあげたいです。

……しっかし、書いたのはいいんですけど、こんなもの読んでくれる人が居るんですかね?
もしも居たら、web拍手ボタンを押してアピールしてくれると嬉しいです。
そしたら頑張れます。

そんな感じで、また次回もよろしくお願いします!

次は『乃木坂春香の秘密』の分析の予定です。

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