鈍色望遠鏡

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『はにかみトライアングル』分析

はにかみトライアングル (電撃文庫)はにかみトライアングル (電撃文庫)
(2005/04)
五十嵐 雄策

商品詳細を見る

小説『はにかみトライアングル』第一巻を分析してみました。
分析についての説明はこちらです。
以下、ネタバレ注意。


概要
・主人公の「水上弘司」が、ネコマタの「美亜」、霊鳥の「千鶴」、神霊の「さくら」の三人に求愛(押しかけ女房)される話。

文章技巧
・三人称単視点(一人称単視点に限りなく近い、ただし部分的に視点が主人公から離れて「神の視点」になる箇所がある)
・地の文は三人称で書かれているが、直接話法的に弘司の心情が語られる部分が多い。(弘司の「語り」に近い形式で書かれている)
・文中で擬音語を多用している。
・描写がコミカル。
・「天丼(同じネタの繰り返し)」によって笑いをとるスタイル。
・まとめて言ってしまえば、「昔ながらのライトノベル」を意識して書いたかのようなお手本(というかパロディ?)的な文体、という感じ。
・「お約束」的な展開を多用する。(おそらく故意に)

登場人物
○水上弘司(視点キャラ、高校二年生、一人暮らし、『統神者(人外に好かれやすい体質)』)
○美亜(弘司の押しかけ女房、ネコマタ、美少女、活発)
○千鶴(弘司の押しかけ女房、鶴の霊鳥、美女、天然)
○さくら(弘司の押しかけ女房、桜の神霊、美童女、博識)
○白瀬奈々(弘司の幼馴染、多趣味、ツンデレ)
○穂村朝陽(弘司の住むアパートの管理人、弘司の父の知り合い(?)、エキセントリック)
○瑞葉(さくらの知り合い、酔っぱらい)
●疫鼠(弘司に取り付いていた疫病神、人を不幸にする)
●岩村剛三(弘司のクラスの担任、通称マウンテンゴリラ)
●養護教諭(弘司の通う学校の保健室の責任者、ロッカーに大量のナース服)
●その他(商店街の人々、警察官、クラスメイトなど)
以上、7+4人が登場する。
また、
●弘司の父(海外赴任中、人が良さそう、『統神者(?)』
●弘司の姉(父と共に海外にいる)
●弘司の妹(父と共に海外にいる、魔を払う力を持つ)
の存在が示唆されている。

登場人物の役割
1.『主人公』→水上弘司
2.『贈与者』→白瀬奈々、美亜、千鶴、さくら
3.『境界守』→美亜、千鶴、さくら
4.『使者』→白瀬奈々、美亜、千鶴、さくら
5.『変化するもの』→穂村朝陽、瑞葉
6.『影』→疫鼠、白瀬奈々
7.『トリックスター』→穂村朝陽
α.『移行対象』→美亜、千鶴、さくら
β.『恋愛対象』→白瀬奈々、美亜、千鶴、さくら
γ.『真の目的』→現状の維持

『主人公』としての弘司は、「周囲の環境の変化により成長を余儀なくされる存在」(典型的な巻き込まれ型主人公)。
『贈与者』としての奈々は、「弘司に行動の指針を与える存在」(託宣者)。美亜と千鶴とさくらは、「弘司に献身する存在」(献身者)。
『境界守』としての美亜と千鶴とさくらは、「人でないもの(魔)の象徴」。
『使者』としての奈々は、「弘司に同行を求める(依頼する)存在」。美亜と千鶴とさくらは、「弘司に同行を求める存在」、また、「弘司が『統神者』であることを明らかにする存在」。
『変化するもの』としての朝陽は、「とらえどころのない存在」。瑞葉は、「役に立つかどうかわからない酔っぱらい」。
『影』としての疫鼠は、「弘司の力に惹かれた存在」(光に惹かれた影、憧憬による寄生)。奈々は、「弘司が認めた人外のものたちを否定する存在」(対立関係)。
『トリックスター』としての朝陽は、「弘司が制御できない『統神者』の力を引き出す存在」。
『移行対象』としての美亜と千鶴とさくらは、「一時的に弘司を庇護する存在」。
『恋愛対象』としての奈々は、「弘司にかねてから想いを寄せていた幼馴染」。美亜と千鶴とさくらは、「弘司に一目惚れした押しかけ女房」。
『真の目的』を「現状の維持」とした理由には、弘司が四人の恋愛対象の中から誰か一人を選ぼうとしないこと、「押しかけ女房」たちが姿を消そうとするのを弘司が止めたことなどがあげられる。

この物語の主人公は、弘司以外にはありえないだろう(異能を持つ者であり、選ばれたものであり、ある種の「貴種」でもあるから)。
美亜、千鶴、さくらの三人がいずれ消える運命にある『移行対象』でありながら、『恋愛対象』でもあるというのは、これまでに見てきた二冊の小説には見られなかったタイプの役割の重複だ。(そもそも、『俺の妹(略』と『乃木坂(略』の主人公たちは、『移行対象』を必要としていなかった)
おそらく、現状で『恋愛対象』としての特性を今後一番発揮できるのは奈々であり、美亜、千鶴、さくらの三人は、最終的には『恋愛対象』でも『移行対象』でもなくなる(物語から消える)か、『移行対象』としての特性(異能の力)を捨てて、奈々と同じ舞台に立つ(人間になる)ものと思われる(ただし、物語の展開によっては、逆に『恋愛対象』としての特性を捨てて、「弘司に使役される存在」として残る可能性もある)。

物語の構成
この物語を「三幕構成」として考えるならば、
・『セットアップ』は、「奈々の占いを信じて、弘司が『困っているもの』たちを助ける」ところまで。
・『第一ターニングポイント』は、「助けた『猫』『人(鶴)』『桜』が恩返しに来る」ところ。
・『第二ターニングポイント』は、「美亜、千鶴、さくらのせいで、弘司が『霊璽の蝕(死に至る病)』に侵されつつあるのだとわかる」ところ。
・『クライマックス』は、「弘司が『美亜、千鶴、さくらと一緒にいたい』と三人に告白する」ところ。
・『レゾリューション』は、「美亜、千鶴、さくらの三人が押しかけ女房に戻り、さらには奈々までやってくる」ところ。
・『ミッドポイントシーン』は、「弘司が体調を崩す」ところ。
・『サブプロット』は、「疫鼠退治」と「美亜、千鶴、さくらの転校」と「美化デーの大掃除」と「奈々との日常」と「巫女さんの登場」。
サブプロットの数が多いのは、「雑誌連載の一話完結型作品」として、一話ごとに見どころとなるエピソードを挿入する必要があったからだろう。(ただし、雑誌に掲載されたのは一話だけらしいので、単純に作者の「癖」であるのかもしれない)

今後の展望
この小説の続編では、
・弘司と奈々、美亜、千鶴、さくらの恋愛模様
を中心とした話が描かれるだろう。
その際、弘司の『統神者』という特性を生かして、「伝奇もの」としての要素が加えられる可能性が高い。その場合は、一話完結で、弘司が様々な依頼や異変を、美亜、千鶴、さくらら三人の力を借りて解決していく物語になることが予想される。
また、弘司の「お嫁さん」として最終的に一人が選ばれるとするならば、幼馴染の奈々か、押しかけ女房たちの中で最も早く弘司と出会っていた美亜のどちらかになるだろう(奈々が選ばれる可能性の方が高い)。

感想
「ああ、ライトノベルを読んだな」って感じがしました。
さらっと読んで、面白かったなーって言いつつ忘れられちゃうような。
この作品は、同著者の『乃木坂春香の秘密』の中にも、「人気アニメ」として名前が出ています。
はじめは、一冊限りの『乃木坂(略』からのスピンオフ作品なのかな?って思ったんですが、どうやら続編も出ているらしく、独自の世界観を構築しているようですね。
「現状の維持」を望んでいるかのような主人公が、今後どんな決断を下していくのかも気になりますし、機会があったらチェックしてみたいと思います。


さて、三冊目の分析が終わりました。
次回は『ほうかご百物語』の分析を行うつもりです。
この『ほうかご百物語』は、今回分析した『はにかみトライアングル』と構造的に似ている部分があるので、次回はそのあたりを重点的に考えてみたいと思っています。
お楽しみに。

そうそう、前回、前前回と、「こんな分析を読んでくれてる人なんかいないよなあ」とぼやいていたら、「毎回チェックしてるよ」と小説書きの友人が言ってくれました。
ありがとう、嬉しいです。
ついでに、「分析の中によくわからない言葉が混じってるんだよね」と言われました。
うん、私も書きながら、「これ、読む人は意味がわからないだろうなあ」って思ってました。
明日あたりにこのページ+αに、分析に関するもうちょっと詳しい(&噛み砕いた)説明なんかを書いておきます。

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